福笑い




福笑い



― 冒頭文 ―

朝、夫が食卓につく。今日もこれと言って用事はない。子どもたちはとっくに独立し、二人だけの日々。見るともなく夫の顔を見る。以前もさほどかんばしい顔ではなかったが、近年著しく輪郭がゆるんできた。よく見なければどこまでが夫の顔なのかわからない。



『 福笑い 』
作:武内紀子 朗読:北村青子 8分54秒



音楽:組曲『くるみ割り人形』より「葦笛の踊り」